本社などの中枢部門への異動は、会社員にとって大きなチャンスに見えることがあります。
私も異動を知らされた当初は、これまでの仕事が評価されたのだと思い、うれしく感じていました。しかし、実際に新しい職場で待っていたのは、それまでとは大きく異なる仕事、人間関係、暗黙のルールでした。
期待に応えようと無理を続けた結果、私は次第に心身の調子を崩していきました。
この記事では、異動をきっかけに仕事がつらくなり、うつ病による休職へ至った経験を振り返ります。
なお、本人・勤務先・関係者のプライバシーを守るため、時期、所属、役職、業務内容、人物関係などの一部を一般化・変更しています。悩んだことや、そこから得た学びは実体験に基づいています。
本社への異動を前向きに受け止めていた
異動前の私は、比較的自分の裁量を持って仕事を進めていました。
周囲に相談しながらも、自分で考えて行動し、仕事を終えたときには一定の達成感がありました。そのような時期に、これまでとは異なる部門への異動を告げられました。
会社の中心に近い部門で働けることを、当時の私は前向きに受け止めていました。
新しい仕事へ挑戦できることや、これまでとは違う経験を積めることに期待していたのです。
しかし、異動後の仕事は、私が想像していたものとは大きく異なっていました。
仕事の進め方が大きく変わった
新しい職場では、多くの関係者との調整や、細かな確認を必要とする仕事が増えました。
以前の職場では、自分で判断して進められる場面が比較的多くありました。一方、異動後は、関係者の意向を確認しながら、決められた手順に沿って進める必要がありました。
仕事の重要性は理解していても、自分が何のために働いているのか分からなくなることがありました。
「評価されたから異動できた」という期待と、「自分はこの仕事に向いていないのではないか」という現実との間で、少しずつ自信を失っていきました。
暗黙のルールについていけなかった
特につらかったのは、明文化されていない仕事上のルールでした。
文書の作り方、確認する順番、関係者への連絡方法など、職場のなかでは当然とされていても、新しく異動してきた人には分からないことがあります。
私はそのルールを十分に理解できないまま仕事を進め、何度も修正を受けました。
指摘されるたびに、「次は失敗しないようにしなければ」と考えました。しかし、失敗を恐れるほど確認に時間がかかり、さらに焦って別のミスをするという悪循環に陥りました。
分からないことを早めに質問すればよかったのかもしれません。
ただ、当時の私は「これくらいは自分で理解しなければならない」「異動してきたのだから期待に応えなければならない」と考え、助けを求めることができませんでした。
上司からの指摘を引きずるようになった
上司から仕事上の指摘を受けること自体は、どの職場にもあると思います。
しかし、心に余裕がなくなると、通常の指摘であっても、自分の存在そのものを否定されたように感じることがあります。
私も次第に、仕事上の指摘を帰宅後まで引きずるようになりました。
家に帰ってからも、その日の失敗や翌日の仕事が頭から離れません。布団に入っても考え続け、十分に眠れない日が増えていきました。
睡眠不足のまま出勤すると、集中力が落ちます。その結果、さらにミスが増え、自信を失っていきました。
体に異変が現れても無理を続けた
心身の調子が悪化すると、仕事へ向かう前に腹痛や吐き気を感じるようになりました。
職場が近づくと胸が苦しくなり、建物へ入るまでに時間がかかる日もありました。それでも私は、「休んだら周囲に迷惑をかける」「もう少し頑張れば慣れる」と考えていました。
今振り返れば、この時点で医療機関や周囲へ相談する必要がありました。
しかし、当時は自分が病気になっているとは考えられず、努力が足りないだけだと思い込んでいました。
無理を続けた結果、やがて通常どおり出勤することが難しくなり、医療機関を受診しました。その後、一定期間仕事を休むことになりました。
異動でつらいときに必要だったこと
異動後の環境に適応できないと、「自分の能力が低いからだ」と考えてしまうことがあります。
しかし、仕事の進め方や職場の文化が大きく変われば、誰でも負担を感じる可能性があります。新しい環境へ慣れるまでに必要な時間も、人によって異なります。
私が当時できなかったのは、次のようなことでした。
- 分からないことを早めに質問する
- 仕事量や困っていることを上司へ伝える
- 睡眠や食欲など、体調の変化を記録する
- 家族や信頼できる人に状況を話す
- 心身の不調が続いた段階で医療機関へ相談する
- 異動や配置の見直しについて相談する
すべてを一度に行う必要はありません。
ただし、眠れない、食事が取れない、仕事へ向かおうとすると強い身体症状が出るといった状態が続く場合、根性だけで乗り切ろうとしないことが重要です。
まとめ:異動に適応できないことと、本人の価値は別
本社などへの異動が、必ずしも本人にとってよい結果につながるとは限りません。
周囲からは昇進や栄転に見えても、仕事内容や職場環境が合わず、本人が大きな負担を抱えることがあります。
私自身、異動後の環境に適応しようとして無理を続け、心身の調子を崩しました。
当時は「期待に応えられなかった」と自分を責めました。しかし今は、一つの職場や一つの仕事に適応できなかったことだけで、その人の能力や価値が決まるわけではないと考えています。
異動後に強い不調を感じている人は、一人で抱え込まず、まず自分の体調を守ることを優先してください。
※この記事は筆者個人の体験と考えをまとめたものであり、医学的な判断や治療方法を示すものではありません。心身の不調がある場合は、医療機関などの専門窓口へご相談ください。


コメント