『豊臣兄弟!』の織田信雄に自分を重ねた|出世できない会社員が感じたこと

【40代の生存戦略】組織の不条理とキャリア再構築

 万年平社員の私。昇進は全然できない。長時間労働をし、業務の課題を解決し、上司に認められさえすれば、昇格できると頑張ってきた。

 周囲にも丁寧に仕事を伝え、上司のサポートもしっかりしてきたつもりだった。だが、それでも思うような評価にはつながらない。昇格はおそらく絶望的だろう。

 周りが早く帰る中、誰も拾わない仕事を拾い、ときには仕事を押し付けられる。深夜まで残業する日々が続いた。それでも、評価にはつながらなかった。

 もちろん、目の前の仕事を頑張って成果を出す力と、管理職として求められる能力や適性が別なのはわかっている。

 それでも悔しいし、悲しい。とはいえ転職する勇気も自信もなく、歯車の中をぐるぐると回っているハムスターのような人生。

『豊臣兄弟!』の織田信雄に自分を重ねた

 そんな中、大河ドラマ『豊臣兄弟!』を少しだけ見た。仕事が忙しくリアルタイムでは見られないため、録画したものを少しずつ見ている。

 小牧・長久手の戦いをめぐり、豊臣秀吉が織田信長の次男・織田信雄と和睦する――。秀吉を描いた作品では、たびたび登場する場面だ。

 今回の『豊臣兄弟!』では、和睦の席で織田信雄が傲慢な態度を見せながらも、織田家に生まれたことへの苦悩を吐露する。そんな信雄に秀長は怒りをぶつけ、席を立つ。一方、秀吉は信雄をなだめるような言葉をかけながらも、最後にはどこか彼を見下すような言葉を投げかける。

 ここまでなら、大河ドラマなどでよく描かれる「愚かな織田信雄像」の焼き直しと、恫喝した後に甘い言葉をかけるという、秀吉の狡猾な交渉術を描いた場面に見える。

 秀長の怒りや、秀吉が信雄にかけた言葉も印象的だった。だが、私が本当に痺れたのは、その後のシーンだった。

 織田信雄が暗い部屋で一人、「猿」のお面をつけて少しだけ踊り、やがて崩れ落ちる。かつて父・信長の家臣として、自分にも頭を下げていた秀吉に見下され、秀長には怒鳴りつけられる。それでも、秀吉にも秀長にも敵わないことを、信雄自身が誰よりもわかっている。

 今の私には、このわずかなシーンで描かれた織田信雄の気持ちが、痛いほどよくわかる。

「勝者は歴史となり、敗者は物語となる」

 以前どこかで聞いたフレーズだ。でも、敗者なら誰もが物語になるわけではない。源義経や劉備、諸葛孔明のように、後世まで語り継がれるのは「美しき敗者」なのだろう。名も残さず、物語にすらならない敗者の方が、きっと圧倒的に多い。

 ドラマ『半沢直樹』なら、主人公の半沢直樹はもちろん、大和田常務のような大物でもない。名前のある小さな敵役ですらない。たぶん私は、その後ろにいる名もなき脇役の一人なのだろう。

 人生の主人公は自分自身だが、主役ではない。誰もが人生という物語の主役になれるわけではない。それはわかっている。それでも私は、名のある脇役にすら、おそらくなれない。

 人生の「大学受験編」で主役だった人が、そのまま「社会人編」でも主役になれるとは限らない。過去の成功体験が大きいほど、社会人になって主役になれない自分を受け入れるのは、案外難しいのかもしれない。

 そして「サラリーマン編」で主役を務めあげた人でさえ、「老後編」でも主役になれるとは限らない。会社で得た肩書や立場を失ったとき、それまでの自分との落差を受け入れるのに苦しむ人もいるのかもしれない。

 人生とは難しくそして悲しいもの。

『アメリカン・ビューティー』に重なる会社員としての虚しさ

 「サラリーマン編」は長い。私も、はたから見ればそこまで惨めな人生ではないのだろう。一見すれば、それなりに幸せな人生なのかもしれない。それでも、本人にしかわからない虚しさがある。そんな人生を描いた映画として思い出すのが、『アメリカン・ビューティー』だ。

 ケヴィン・スペイシー演じる主人公レスターには、妻と一人娘がいる。会社では特別に評価されているわけでもないが、仕事も家もある。はたから見れば、それなりに恵まれた生活を送る中年男性だ。

 レスターは、家族にも会社にも大切に扱われていないという不満を抱え、かつて思い描いていた自分と、年齢を重ねた今の自分とのギャップにも苦しんでいる。映画の冒頭では、朝の自慰の時間が「一日のピーク」だと独白する。

 物語は、レスターが娘の友人に惹かれ、会社を辞め、それまでの生活から抜け出そうとする方向へ動いていく。隣人一家の問題も含め、一見すると満たされているように見える家庭や社会の内側にある虚しさを描いた映画だと、私は受け取っている。

 映画全体もそうだが、今の私には、冒頭のレスターの独白が強く刺さる。そして、風に吹かれたビニール袋が、ただゆらゆらと舞い続けるシーンも忘れられない。何でもない光景なのに、今見ると妙に胸に残る。人生とは、なんと虚しく、そして悲しいものなのだろう。

出世できない自分と、子どもに語れない仕事

 映画の主人公に自分を重ねながら、現実の自分に戻る。会社での昇格は、もう絶望的だと思っている。子どもから「会社ではどんな仕事をしているの?」と聞かれると、自分でも驚くくらい不機嫌になってしまう。

 「いつも遅くまで仕事しているから、頑張っているんだね」と言われることもある。子どもに悪気などあるはずもない。それなのに、その言葉を聞くと、さらに心が痛くなる。

 そんな苛立ちを抑えながら、当たり障りのない答えでお茶を濁す。それだけで精いっぱいだ。

 本当は、子どもに自分が会社でどんな仕事をしているのか、その仕事にどんな意味があるのか、そして働くことの楽しさを、胸を張って語れるような会社員になりたかった。

今の会社で働き続けるか迷っている人へ

 私自身、「このまま今の会社で働き続けていいのか」と考えることがある。一方で、すぐに転職すると決断できるわけでもない。そんなときは、転職する・しないを決める前に、自分がこれからどう働きたいのかを第三者と整理してみるのも一つの方法だと思う。

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