最近は、実用書や社会人とはこうあるべきといった本を読んでばかりいたので、古典も読まないといけないなぁと思い、図書館へ。
トルストイの戦争と平和や中国の古典等も検討したのですが、難しそうだったので、悩んでいる時に、魯迅のコーナーを発見。
魯迅は、高校か中学の教科書にも短編が載っており、明治時代あたりに日本にも留学していた事も知っていたので、親しみがあり、借りてみました。
狂人日記
魯迅の処女作の「狂人日記」。最初に普通に読んでいくと、周りが食人鬼と妄想した座敷牢の狂人の日記としか理解できませんでした。
魯迅は、狂人日記で何を読者に伝えたかったのだろうと思い、ネットで検索。狂人日記の解説では、儒教的な価値観(親のために子供が食べられるといった昔の寓話)に対するアンチテーゼのようです。
確かに三国志かなにかでも、劉備を迎え入れるのに、妻を殺して、劉備に食べさせた人が称えられていたような気がして、少し引いたのを覚えています。
魯迅の作品は、儒教的な価値観への挑戦といった内容が多いので、処女作である狂人日記もそのように解説されると納得しました。
阿Q正伝
次は、魯迅の作品の中で一番有名と思われる「阿Q正伝」を読んでみました。「阿Q正伝」の名前は聞いた事はありましたが、読むのは初めてでした。
魯迅は短編集が多いのですが、阿Q正伝は比較的中編なような気がします。
阿Q正伝の内容・あらすじは、割愛しますが、主人公の阿Qは、読者として客観的に読んでいると、なんだこいつ?みたいな主人公(※)ですが、よくよく考えると、果たしてどれだけの人が阿Qをバカにできるのかなとも思いました。
う~ん。魯迅の小説は、読んだ直後に暗くなるような短編集が多いですが、阿Q正伝は、主人公の阿Qがアホすぎて、その他の短編集よりも読後暗くはならないですが、読んだ後になんとも言えない気持ちになりますね・・・・。
※その日暮らしで、人と喧嘩して負けても精神的勝利法にて自らは負けていないとする。そして、勝てそうな尼さんを虐めた際に、ムラムラしてしまう。雇先の下女にそのムラムラで言いより、断られ、村中でさらに嫌われ者に。辛亥革命軍に入ったつもりになり、最後はその革命軍に強盗として処刑されるという主人公・・。
故郷
中学3年生の時の国語の教科書に載っていた「故郷」を読んでみました。
内容的には、主人公がある程度出世して、故郷に帰ってきた際に、子供の頃、色々な事を教えてくれた父親の農場の小作人の息子であった閏土と再会したものの、大人になった閏土は、主人公の事を「旦那様」と呼び、子供時代の面影はなくなってしまっていたという話。
お互い大人になり、主人公と小作人である閏土の間には、大きな隔たりができたが、主人公の甥と閏土の子供は、かつての主人公と閏土のように仲良く遊んでいる姿を見て、次世代に希望を託すといった内容。
中学時代に読んだときは、この作品の趣旨や背景、伝えたい事は「授業」を通じて、頭では理解していましたが、あまり実感がありませんでした。
社会人になりたての20代前半に読んだときは、なんともいえない気持ちになりました。そして30代も後半になり改めて読みました。
また30代後半になって、改めて読むとまた20代前半の時の感想とは違ってきますね・・・。
20代前半の時は、なぜか根拠もなく自分は、主人公側目線で、大人になって社会的身分に人間関係が影響されるのは悲しいな等と考えていたのですが、30代後半になって、自分は、この魯迅の「故郷」における「主人公」ではなく、「閏土」である事に気づいた辛さ・・・。
そう、こういった小説を読むときは、なぜか自分は主人公もしくは成功者側目線で、世間はなんて寂しいんだ等と思いあがった感想を何の根拠もなく20代の時は考えていました。
でも実際、30代後半になって、自分は決して主人公ではなく、社会の重圧に負けてしまった小作人である閏土である事実に改めて気づかされました・・。
孔乙己・薬・明日・小さな出来事
魯迅の短編集を読み進めていきます。
魯迅の短編集は、時代背景はある程度は知っていますが、少しだけ擬古文調であり、スラスラとは読めませんが、その分短編なので、ちょうどいい感じ。
また短編すぎ、あっさりすぎて、読後に、これってどういうことを魯迅は伝えたかったのだろうとネットで解説を改めてみるのも楽しみ方の一つ。
孔乙己
最初、読んだときは、居酒屋にたまに来る落ちぶれた知識人が盗みを働いて、死んでしまったとしか理解ができませんでした。
後で、ネットで解説などを見ると、魯迅による清朝時代の行き過ぎた科挙への批判等も含まれた話との事。魯迅の話は結構暗いんだよなぁ・・・。
薬
薬は、テーマが重いかつ、ぼやかして書かれているので、最初はなんとなく、子供の病気を治すために、人の心臓を買ってきた親の話、でも子供は死んでしまったといった話にしか理解ができませんでした。
もう一度読み直して、最後のシーンは、「心臓」を食べたが死んでしまった子供の母親と、(清朝への反乱である辛亥革命の革命軍兵士で密告され、死刑になり、心臓を売られてしまった)兵士の母親が墓場に並んで、亡くなった子供を弔っているシーンという事に理解できました。
ネットで解説を読んでみると、魯迅による漢方への批判、そして辛亥革命兵士への罪悪感等から構成された短編小説との事。
こちらもやはり一読した後、暗くなり考えさせられる文章でした。
明日
「明日」は貧しい母親が、子供をなくしてしまう話。子供を見てくれた医者(おそらく漢方医)はやぶ医者だったのかどうかは不明。周りの人間も自分本位とはいえ、悪人はおらず、何とも言えない気持ちになる作品。
小さな出来事
小さな出来事は、人力車の車夫の行いを見て、自らが傲慢になってしまった事を恥じ入る話。暗い話題が多い魯迅の短編集の中では、比較的、前向きな話だと思いました。
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