はじめに:出世と無縁の私が「リーダー論」を読む理由
「リーダーシップ」「最強の組織論」……。 本屋のビジネス書コーナーに行けば、そんな威勢のいい言葉が並んでいます。しかし、40代を迎え、企業のリーダーどころか中間管理職にすらなれない万年平社員の私にとって、それらはどこか「別世界の話」のように感じられてなりませんでした。
うつ病になり、出世競争からは早々に脱落しましたが、それでも「組織」という場所で生きていかなければならない現実は変わりません。
そんな私が手に取ったのが、中国史における帝王学の最高傑作と言われる古典、『貞観政要(じょうがんせいよう)』でした。
挫折したからこそ響く、古典という名の「鏡」
私は、ビジネススキルとしてのリーダー論ではなく、歴史的名著という観点から古典を読むのが好きです。 かつてマキャベリの『君主論』やクラウゼヴィッツの『戦争論』にも挑戦しました。『君主論』はなんとか読めたものの、『戦争論』の難解さにはあえなく断念した苦い経験もあります。
唐の太宗・李世民の政治の要諦をまとめた『貞観政要』も、ずっと気になっていた一冊でした。しかし、和訳本の分厚さと重厚なイメージに、なかなか一歩を踏み出せずにいたのです。
そんな時、ふと目に入ったのが、元銀行員の作家・江上剛氏による『使える!貞観政要』でした。
『使える!貞観政要』:歴史書ではなく、痛快な「サラリーマン生存戦略」
本書は、単なる古典の解説本ではありませんでした。 貞観政要から選りすぐられた一節に対し、江上氏が銀行員時代に直面した生々しいエピソードが添えられ、現代の組織で働く人間への教訓として昇華されています。
実際にページをめくってみて驚いたのは、江上氏の銀行員時代の話が面白すぎること。 歴史書として『貞観政要』を深く学びたい人には物足りないかもしれませんが、「古典の知恵をどう現代に転用するか」という視点においては、これほど読みやすい本はありません。
• リーダーの本質とは何か?
• 中間管理職が抱える苦悩にどう向き合うか?
こうしたテーマが、著者の実体験というフィルターを通すことで、歴史上の出来事が急に自分事として迫ってきます。
万年平社員の私が、帝王学から学んだこと
本書の主なターゲットは、おそらく中間管理職の方々でしょう。 正直なところ、読み進めながら「私はいつになったら課長になって、この本で学んだことを活かす機会が訪れるのだろうか」と、少し自嘲気味な思いが頭をよぎったのも事実です。
しかし、読み終わって気づいたことがあります。 『貞観政要』の根底にあるのは、「人の意見を聞く耳を持つこと」や「過ちを認め、正す勇気」です。これらは、役職に関係なく、一人の人間として、また一人のサラリーマンとして、平穏に、かつ誠実に生きていくために不可欠な知恵だと感じました。
出世競争から脱落したからこそ、ギラギラした野心抜きで、これらの言葉を素直に受け入れることができたのかもしれません。
次はどの古典に挑戦しようか。 そんなことを考えながら、明日もまた、平社員としての日常を淡々と過ごしていこうと思います。


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