【書評】異文化理解力/エリン・メイヤー

40代夫婦の体験談

 私がまだ会社で有望視されていた30代の頃。異業種の中堅社員同士の交流会に会社代表で選ばれた際に、日立の経営企画出身の人からお勧めされた1冊。

 全然、読む気がなかったが、40代になり出世コースからも外れ、窓際族となった私が暇つぶしに読んでみた。

 エリン・メイヤー著の「異文化理解力」。相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養。

 主にグローバルに仕事をするエリートサラリーマン向けの本。英語が話せても色々な地域の国々(英米、中国、欧州)と仕事をする中でのすれ違い・誤解の要因等を分析だってまとめた1冊。

 文化を8つの指標に分類し、主な国々の位置づけ、筆者が経験したすれ違いの実例がうまくまとめられている。

 ビジネスパーソンからほど遠くなった私でも楽しく、一気に数時間で読める1冊。

主な8つの指標は以下の通り。

①コミュニケーション

②評価のやり方

③説得の方法

④リード(組織階層の考え方)

⑤決断(決断の方法)

⑥信頼

⑦見解の相違

⑧スケジューリング(時間概念)

 それでは一つずつ指標についてまとめて行ってみようと思います。

コミュニケーション

 コミュニケーションはローコンテクストハイコンテクストに分類される。

 ローコンテクストとは、良いコミュニケーションとは厳密でシンプルで明確なものととらえる文化。主にアメリカ・イギリス・オランダ等の文化

 ハイコンテクストとは、良いコミュニケーションとは繊細で含みがあり、多層的なもの。行間を読むことが必要な文化。主に日本・中国・韓国・インド等の文化

 スペイン人の上司(イギリス等に比べるとほのめかしが多いが、日本・中国に比べるとはっきりと述べる文化)と中国人の部下(ハイコンテクストの文化)との行き違いの実例が実に面白かった。

 スペイン人の上司が、中国人の部下に「日曜日に出社して欲しい」と依頼し、中国人の部下は「はい。おそらく。日曜日は娘の誕生日なのです」と回答。スペイン人の上司は「わかった、みんなで楽しめるといいね」と言葉を締める。

 結局、中国人の部下は日曜日に出社せず、スペイン人の上司は困惑するという実例。日本人の私からしても、スペイン人の上司が「わかった。みんなで楽しめればいいね」と言われると日曜日は出社しなくてよくなったのかなと思う気持ちがわかった。

評価

 評価の方法を直接的なネガティブフィードバックを行う文化と間接的なネガティブフィードバックを行う文化の対比。

 直接的なネガティブフィードバックは同僚へのネガティブフィードバックは率直に単刀直入に正直に伝える。ネガティブなメッセージを直接伝え、ポジティブなメッセージで和らげることはしない。ロシア・イスラエル・オランダ・フランス等で顕著。意外とアメリカ・イギリスはオランダ等に比べるとその傾向は少ない。

 間接的なネガティブフィードバックは同僚へのネガティブフィードバックは柔らかく、さりげなくやんわりと伝える。インド・中国・サウジアラビア・日本・タイ等で顕著。間接的フィードバックが一番強い、日本やタイでは、ネガティブフィードバック自体をどれだけ柔らかくしていても他人の前で行う事自体が禁忌。

 日本人からすると直接的なフィードバックを行うように思えるアメリカは、フランス等に比べると間接的なフィードバック文化。ネガティブなフィードバックはポジティブな事を伝えてからさりげなく伝えるのがアメリカ流とのこと。

 アメリカ人上司が、フランス人の部下にここを直してほしいとフィードバック(アメリカ流に素晴らしい点を挙げてから、でもここは直してほしいという間接的フィードバック)を行っても、フランス人の部下は、自分がとてもアメリカ人上司から評価されていると認識している実例が面白かった。

説得

 相手を説得する方法について、原理優先応用優先かの文化的違い。

原理優先は、各人は最初に理論や複雑な概念を検討してから事実や意見を述べる。イタリア・フランス・ドイツ等での考え方。

応用優先は、各人はまずは事実や発言や意見を提示した後にそれを裏付けたり、結論に説得力を持たせる概念を加える考え方。アメリカでの考え方。

 原理優先のフランス人上司がメールで前提や概念を書いてから結論を付ける長いメールを送っても、応用優先のイギリス人がメールの最初の方に結論や事実が書いていないから長いメールを読まずにほっておくという実例が面白かった。

 そして日本・中国等は西洋の原理優先・応用優先の分類ではなく、包括的思考を行う。アジアは包括的思考。西洋は特定的思考に分けられる。

特定的思考では、要求を個別にかなり具体的に行うもの。

包括的思考とは、全体像を説明する時間をとり、相互の関係性を提示する必要がある。

 包括的思考の日本人が人物の写真を撮るように指示されると、部屋全体を移してその中に特定の人物を映すのに対して、西洋人の場合は、その人物の顔だけ写真を撮るといった実例がわかりやすかった。

リード

 リード(上司と部下の関係、あるべき上司像)は平等主義的階層主義的に分類される。

 平等主義は、上司と部下の理想の関係は近いもの。理想の上司は平等な人々の中のまとめ役。オランダ・スウェーデン等に見られる。

 階層主義は、上司と部下の距離は遠いものであり、理想の上司は最前線で導く旗振り役。肩書が重要であり、組織は序列に沿ってコミュニケーションされる。日本・韓国・ナイジェリア等

 平等主義的なオランダ人の上司が、部下の部下に知りたいことがあり直接メールを送ったら、(オランダに比べると階層主義的な)カナダ人の部下たちが混乱してしまったという話は、極めて階層主義的な日本人の私にとってはとても納得感のある話であった。

決断

 決断の方法は合意志向トップダウン式に分類される。

 合意志向は、決断は全員の合意の上、グループでなされる。日本が極めて顕著で、西欧の中ではドイツ等が合意志向の国々。一度決断された内容は変更が難しい。

 トップダウン式は、決断は個人でなされる。ナイジェリア・中国等。西欧の国々ではアメリカ・フランス等が合意志向の国々。一度決断した内容は状況に応じて変更される。

 西欧の中では合意志向の強いドイツ人とトップダウン式のアメリカ人との合併協議の話が面白かった。アメリカ人はその場で責任者が簡単に結論を下すが後で変えてくると悩むドイツ人。ドイツ人は結論が遅いと悩むアメリカ人の葛藤。

 合意志向が世界的にみても極めて強い日本の紹介で、「稟議システム」を実例に挙げ、わざわざ日本人は稟議についてシステム化していると驚きを交えて記載されているのが面白かった。

 弊社も効率性を大々的にあげ、稟議をシステム化したなぁ(笑)

信頼

  お互いの信頼をタスクベース(頭)で考えるか、関係ベース(心)で考えるか。

 タスクベースは、信頼はビジネスに関連した活動によって築かれる。仕事の関係は実際の状況に合わせてくっついたり、離れたりが簡単にできる。アメリカ・オランダ・ドイツ等

 関係ベースは、信頼は食事をしたり、お酒を飲んだり、コーヒーを一緒に飲むことによって築かれる。仕事の関係はゆっくりと長い時間をかけて築かれる。インド、サウジアラビア、ナイジェリア、中国等。

 関係ベースのロシア人が最初、友好的なアメリカ人がビジネスが終わるとあっさりとバイバイすることに驚く等、こちらの章は「飲みにケーション」を重視する日本人の私にとってわかりやすい章であった。

 意外なことに日本は関係ベースながら、中国やインドに比べるとタスクベースよりであることが意外であった。ただ中国人は仕事でよくお酒を飲むという話も聞いたことがあるので、後から納得。

見解の相違

 見解の相違とは、対立型対立回避型に分類される。

対立型:見解の相違はチームや組織にとってポジティブな事だと考えている。表立って対立するのは問題ない事であり、関係にネガティブな影響は与えない。イスラエル・ドイツ・フランス等

対立回避型:見解の相違や議論はチームや組織にとってネガティブなものだと考えている。表立って対立するのは問題。日本・インドネシア・タイ等。

 対立回避型の例として日本が挙げられ、「面子」の問題、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」等が挙げられている。面子は日本人も中国人も気にするからすごいわかった。

 JTCのおじさんは面子で生きているからなぁ(笑)

スケジューリング

 スケジューリングは直線的な時間柔軟な時間に分類される。

直線的な時間:プロジェクトは連続的なものとして捉えられ、一つの作業が終わったら次の作業へと進む。ドイツ、日本、スイス等

柔軟な時間:プロジェクトは流動的なものとして捉えられ、場当たり的に作業を進める。様々なことが同時に進行し邪魔が入っても受け入れられる。サウジアラビア、ナイジェリア、インド、中国等

 約束の時間に遅れた場合の対応等の事例がわかりやすかった。日本やドイツは1分でも遅れたらまずいと感じるが、フランス等は数分は許容範囲内、インドであれば15分遅れるのも45分遅れるのも気にしない等。

 工業化が先に進んだ国々では、直線的な時間であり、発展途上国(制度や国の方針がころころ変わる)はどちらかといえば柔軟な時間

まとめ

 8つの指標をもとに考え方の違いが明確に記載され、様々な国々がどちらに分類されるかがわかりやすく表記されている。

 さらに実例等も豊富に挙げられ、より深い考察、対応方法等まで記載されており、わかりやすい1冊。

世界をまたにかけるビジネスパーソン以外の人でも比較文化論という観点、海外の人はどのように感じるのかといった興味本位からでも楽しめる1冊。


 

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