豊臣兄弟とアメリカンビューティー

 万年平社員の私。昇進は全然できない。長時間労働をし、業務の課題を解決し、上司に認められさえすれば、昇格できると頑張ってきた。

 後輩等にも丁寧に仕事を伝えていたつもりだった。上司の補佐もしっかりしていたつもりだった。だが評価は今回も悪く、おそらく昇格は絶望的だろう。

 周りが早く帰宅する中、誰も拾わない仕事を拾ったり、押し付けられたり。深夜残業が常態化していたがそれも無駄だった。

 当然今ある仕事を頑張る・成果を出すという実務能力と昇格し、管理職とできるかの適正は別なのはわかっている。

 それでも悔しい・悲しい。とはいえ転職する勇気も能力もなく、歯車の中をぐるぐると回っているハムスターのような人生。

 そんな中、大河ドラマの豊臣兄弟を少しだけみた。最近、長時間勤務、休日出勤が続いており、リアルタイム視聴することができず、録画したものを小分けに再生してみている。

 小牧長久手の戦いに戦術的に徳川家康に敗れた秀吉が、織田信長の次男の織田信雄に和睦を持ち掛ける秀吉関連の大河ドラマではよくあるシーンの一つ。

 今回の大河ドラマ豊臣兄弟では、織田信雄が和睦の席で、傲慢な態度をとりつつ、織田家に生まれたのを後悔、父のように寺の中で惨めに焼け死にたくはないと吐露。これに怒った秀長が信雄を怒鳴りつけ、和睦の破棄をつげ、退出。その後、秀吉が信雄に甘い言葉でとりなし、でも最後に軽蔑・下に見たような発言をしてシーンは終わる。

 このシーンだけだと、大河ドラマ等でもよく描かれる愚かな信雄像の焼き直しと、恫喝の後に甘い言葉をかけるというまぁありがちな狡猾な交渉術に留まる。

 Xやネットでは秀長が切れたことや秀吉が信雄に「これからも私のために働いてちょ」といったシーンについて多く語られていたが、私はその後のシーンに痺れた。

 織田信雄が暗い部屋で一人で「猿」のお面をつけ、少しだけ踊り、崩れ落ちるシーン。かつて父の部下として、信雄にも頭を下げ続けてきた秀吉に小ばかにされ、秀長に恫喝される。とはいっても秀吉にも秀長にも勝つことはできないことは自分自身でも痛いほどわかっている。

 今の私には今回の大河ドラマのこのわずかなシーンにすぎない織田信雄の気持ちが痛いほどよくわかる。

「勝者は歴史となり、敗者は物語となる」 

 以前どこかで聞いたフレーズ。でも物語となる敗者は義経しかり劉備・諸葛孔明しかり美しき敗者なんだな。敗者の多くは醜く、卑下なもので物語にすらならない。

 日曜ドラマでの半澤直樹。主人公の半澤直樹やその大敵大和田常務までいかなくても小物の敵として出てくる小里、その他の多くのもの。でも私は、小里やその小物の敵のわき役にすらおそらくなれないんだろうな。 

 人生の主人公は自分自身だが、主役ではない。人生の主役になれる人物はごくわずかなのはわかっているが、名のある脇役にすらおそらくなれない。

 ●●の人生の「大学受験編」で主役だった人が社会人編で主役になれるわけではない。サラリーマン編で主役になれないことに自分自身を納得させられない人が学歴主義に走るのだろう。

 そしてサラリーマン編で主役を務めあげた人でさえ、老後編で主役になれるとは限らない。社会人編で主役だが、老後編で主役になれなかった人が、漕ぎらせるとコンビニ等で若い店員に恫喝するいわゆる迷惑老人になるのだろう。

 人生とは難しくそして悲しいもの。

 アメリカンビューティーのケビンスペーシーが演じる主人公が、冒頭で朝のオナニーの時間だけが自分の唯一の救いというのがわかる年齢になってきた。

 話は戻るが、会社での昇格は絶望的。子供から会社でどんなことをしているのかを聞かれると自分でもわかるくらい不機嫌になってしまう。

 惨めな気持ちが抑えきれないからだ。せめて子供に会社でどんなことをしているかを恥ずかしがらず、胸をはって話せるような会社員になりたかった。

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