はじめに:「静かな退職」は賢い選択なのか?
最近、SNSなどで「静かな退職(Quiet Quitting)」がもてはやされています。「必要最低限の仕事しかしない」という生き方は、責任過多な現代において、20代や30代前半の若手には賢い生存戦略に見えるかもしれません。
しかし、会社員人生は想像以上に長いものです。かつて猛烈に働き、そして挫折した私から言わせれば、明確なビジョンなき「静かな退職」は、40代・50代になったときに「虚しく、惨めな後半戦」を招くリスクを孕んでいます。最悪の場合、実質的な退職勧奨という冷酷な現実を突きつけられることさえあるのです。
私の実体験を通して、その「静かな退職」の先に待っている風景をお話しします。
24時間戦った20代と、崩れ去ったプライド
私の20代は、今の時代では考えられないほど「がむしゃら」でした。平成20年代、まだ会社には昭和の猛烈な匂いが色濃く残っていました。
当時の日常は、連日のように23時から24時まで及ぶ残業。その後は課長との「お仕置き飲み会」が始まり、終電を逃して深夜1時を回ることも珍しくありませんでした。当時はまだ課長クラスにタクシー券が配られており、その券を握りしめて寮へ帰る日々。地方支社時代には、取引先の運動会にまで駆り出されるほど、組織にどっぷりと浸かっていました。
転機は、本社の経営企画部門への栄転でした。時代はもう2010年代。がむしゃら社員は不要な時代ン突入です。
そこで私を待っていたのは、氷河期世代の合理主義な課長でした。 それまでの「根性と飲みニケーション」は一切否定されました。残業をすれば、「なぜ残業が必要なのか? ①能力不足か、②時間不足か、③やる気不足か?」という、執拗なまでの「Why分析」を毎日突きつけられたのです。
「自分はストレスに強い」という根拠のない自負は、音を立てて崩れ去りました。気づいた時には、私はうつ病を発症していました
「静かな退職」という名の精神的シェルター
うつ病を患って以降、私のキャリアは「鳴かず飛ばず」となりました。かつてずっと後ろにいたはずの後輩に背中を見、同期が管理職として采配を振るう中で、私は平社員として取り残されました。
そんな折、世間で流行し始めた「静かな退職」という言葉は、ボロボロになった私のプライドを救う「心の拠り所」となりました。
• 「自分は出世競争に負けたんじゃない、自分から降りたんだ」
• 「責任ばかり重い管理職なんて、今の時代は罰ゲームだ」
• 「最低限の仕事をこなして給料をもらうのが、令和の最先端だ」
そう自分に言い聞かせることで、私は自分の現状を正当化し、虚しい隙間を埋めていました。しかし、それは能動的な選択ではなく、ただの現実逃避だったのかもしれません。
「働き方改革」の恩恵から外れた、40代おじさんの日常
40代を超え、係長のまま停滞している私に対し、会社は静かに、しかし残酷に「お荷物」としての評価を突きつけてきます。
特に皮肉なのは、昨今の「働き方改革」です。会社が大切にする「将来有望な若手」や「キャリアを目指す女性」は、リモートワークや柔軟な働き方を優先的に配慮されます。その一方で、「出世の遅れた、経験だけはある40代のおっさん」である私には、誰もやりたがらない雑務や押し付けやすい業務が山のように降ってきます。
またいろんな場面で、会社・人事部にとって、40代の出世の遅れたおっさんは、お荷物・邪魔なんだろうなと感じる局面が大幅に増えてきます。
年始の社長の挨拶等での「我々、みんな」には、もう40代の出世の遅れたおっさんは入っていない。
働き方改革・リモートワーク等も、会社が大事にしている「若手職員」、「女性だけど頑張っている人」等が優先的に「配慮」され、出世の遅れたおっさんは、毎日出社・仕事量は大量に振られ、毎日22時までの残業の日々。
毎日22時までの残業は40歳を超えるとしんどいが、まだ我慢はできる(残業代もきっちり出るため)。また22時以降は深夜残業代となり、また部としての対面が悪いため、原則は22時までの残業で収まっているのも、働き方改革のおこぼれを預かっている認識はあります。
希望がないと人間は疲弊する
もはや「希望」はないのだ。20代後半・30代前半のうつ病になる前のイケイケ時代は、22時どころか24時・25時、休日出勤をしても夢があった。
このまま頑張っていけば、評価される・出世できるという夢・希望があった。
だが出世が遅れ、静かな退職をしていると嘯きつつ、経験があるからと雑務・業務を押し付けやすい対象になった40代の出世の遅れたおっさんは、いくら22時まで残業してももうこの会社での「未来」も「居場所」も「夢」もないのだ・・・。
それでも「会社以外の軸」を持てますか?
「静かな退職」という生き方を否定はしません。事実、私は会社にお荷物扱いされながらも、なんとか家族と食べていけています。これは、今の会社がある程度の規模であり、すぐにはリストラされないという幸運に甘えているに過ぎません。
もし、あなたがこれから「静かな退職」を選ぼうとしているなら、どうか自分に問いかけてみてください。 「夢も希望もなく、誰からも評価されないサラリーマン人生を、あと10年以上続ける覚悟はありますか?」
もしその道を進むなら、会社以外の場所に「人生の軸」を必死に構築してください。副業、資格取得、あるいは自己肯定感を高めるための趣味。会社に依存せず、自分を律する何かを持っていなければ、待っているのはただの「虚無」です。
会社は、あなたが思うほど優しくありません。しかし、人生をどう彩るかは、会社ではなくあなた自身に懸かっているのです。
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おまけ
「静かな退職」を続けることは、「沈みゆく豪華客船の中で、一番居心地の良いラウンジを探し続ける」ようなものです。
船(会社)が浮いている間は、最低限の仕事で優雅に過ごせるかもしれません。しかし、40代・50代になったとき、船が傾き始めても、あなたには「別の船に飛び移る筋力(スキル)」も「救命ボートを出す権限(役職)」も残っていません。
もしラウンジで休むなら、同時に「自分で泳ぎ切るための訓練」を怠らないことが大事です。
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