はじめに:なぜ40代の私が「小学生向け」を手に取ったのか
滝沢馬琴の名作『南総里見八犬伝』。日本人なら誰もがその名を聞いたことがあり、「いつかは読んでみたい」と憧れる古典の金字塔です。私もご多分に漏れず、長年「読もう、読もう」と思いつつ、手を出せずにいました。
一度、現代語訳の全文読破にチャレンジしたこともあります。しかし、江戸時代後期の作品特有の文体は、原文のニュアンスが残る分だけ読み解くのにエネルギーを使い、何よりその圧倒的なボリュームと登場人物の多さに、あえなく途中で断念してしまいました。
40代になり、難しい本を無理に読むのはしんどい。でも、教養として、あるいは純粋なエンターテインメントとして、あの「八犬伝」の世界を体験したい……。そんな私がたどり着いた解決策が、「角川つばさ文庫」の小学生向けエディションでした
「角川つばさ文庫」版の意外なメリット
小学生向けなんて」と侮るなかれ。この1冊で完結する要約版には、大人の再入門にこそふさわしいメリットが詰まっていました。
• 今風のイケメン挿絵で脳内再生が捗る 現代のアニメやゲームのような、いわゆる「イケメン」として八犬士たちが描かれています。これにより、名前と顔が一致しにくい古典特有のハードルが劇的に下がります。
• 1冊でストーリーの「背骨」が掴める 膨大な原作を1冊に凝縮しているため、話の流れが非常にスピーディーで分かりやすいのが特徴です。挫折の最大の原因である「情報の多すぎ」が解消され、南総里見八犬伝がどのような物語なのかを最短距離で知ることができます。
江戸の古典は「週刊少年ジャンプ」の原点だった?
読み進めていくうちに気づいたのは、この物語が持つ圧倒的な「王道感」です。
不思議な珠を持つ8人の剣士が、運命に導かれるように集結していく。このプロセスは、まさに「努力・友情・勝利」という『週刊少年ジャンプ』の黄金パターンそのものです。もちろん、歴史的には八犬伝の方が先ですが、現代の私たちが熱狂するバトル漫画やRPGの源流がここにあることを強く実感させられます。
江戸時代の庶民がこの物語に熱狂し、芝居や浮世絵で楽しみ尽くした理由が、時を超えて理解できたような気がします。
聖地巡礼の楽しみ:地元・千葉と東京が舞台
物語のメイン舞台は関東(東京都東部~千葉県西部。
地名が具体的に登場するため、「あ、ここはあの場所のことか!」と地図を広げながら読む楽しさがあります。日常の風景も、八犬伝の世界観を知ることで、少しだけ歴史の深みを感じる特別な場所に変わるかもしれません。
結びに:挫折したことがある人にこそ勧めたい
もし過去に古典読破に挑戦して挫折した経験があるなら、あるいは「教養を身につけたいけれど時間がない」と感じているなら、ぜひプライドを捨てて児童書コーナーへ足を運ぶことをお勧めします。
角川つばさ文庫版『南総里見八犬伝』は、古典の最高の入り口でした。私はこの1冊をきっかけに、次はもう少し詳しく書かれたバージョンにも挑戦してみようという意欲が湧いてきました。
社会・会社に少し疲れた大人にこそ、この運命に立ち向かう八犬士たちの物語は、心地よい刺激をくれるはずです。

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