将来、大企業等に就職するには最低マーチは出ておいた方がよい。マーチに行くためには中学受験も視野に入れないといけないが、塾代とかお金が必要だよなと漠然とした悩みがあった際にふと手にとってみた本。
現実的な(お金・経済的)なメリット・デメリット等が記載されているとの先入観で読み始めましたが、そのようなよこしまな考えはダメだと本書のあらゆるところで記載されており、反省。
本書の概要
12歳でやるか15歳でやるか
12歳で中学受験をするか、15歳で高校受験をするかを選ぶ必要がある。高校受験をする15歳は思春期真っ只中で子供の成長を踏まえると思春期の真ん中に(高校)受験があるのは(著者)としてはお勧めしない。
シラバスよりハビデゥス
私立中学には、創業者の思いや創業以来の伝統といった目に見えないものがある(学校の目に見えない方針等。戦前から続く旧制中学を母体とする公立高校にもある)
そのような教育方針に子供や親が合致すれば得難い体験となる。
バットを持つか鉛筆を持つか鉛筆を持つか
中学受験の日々は、(親子ともに)数々の試練を乗り越え、人として成長するための大冒険である。中学受験を頑張る小学生は、野球や音楽を頑張る小学生と同じ。世間の風潮としては前者には子供に勉強させて可哀そう、後者には肯定的な目線が集まるが、試練に挑戦し・ときには挫折し、努力する体験としては同じこと。
偏差値よりも生きる指針
中学受験はどうしても偏差値ばかり目が行ってしまうが、重要なのは親子で何が正しいかを話し合い、新たな信頼関係が結ばれ、それが今後の親子双方の人生を支える体験。
感想
思春期真っ只中の中学3年生で高校受験をするのは、戦後始まった話(戦前は旧制中学は5年生)であり、海外でもあまりないということは知らなかった。確かに思春期真っ只中に受験というイベントがあり、中学と高校で分断されるのは友人関係構築・子供の成長にとってもよくないと感じた。
大学受験だともう大人なのでお金の支援は別として子供自身の責任で対応すべきだし、逆に中学受験は親子で一緒に臨むものである一方、高校受験は悩ましい。15歳の子供に完全に自分自身の責任で対応せよというのも酷だし、とはいっても反抗期真っ只中の子供が小学生のように親の指導に従うとも思えない。
私も中学受験をし中高一貫校出身です。高校受験がなく、中学時代はのんびりと過ごせた(ゲーセンに嵌った)のを思い出しました。またアラフォーになった現在付き合っている友人も多くは中学・高校時代の友人です。
公立中学は色々な経済的な状況の子供が集まるから多様性があるが、私立は親の階層が固定化されているから多様性がないという一般的な指摘に対して、著者が経済的な格差があることは私立の子供達も現実として認識すべきことではあるが、それは教育の問題とは別の社会課題だと一刀両断していたのは納得。
また逆に公立では同じ地域の子供が集まり、所謂マイルドヤンキーという言葉があるように地域で固まる傾向があるので公立が多様性があるというのはどうかとの指摘も納得。
私の父も所謂JTCの課長であり、所謂アッパーミドル(今の経済環境だと上級国民といわれるのだろうが、上級国民なのかは疑問)。郊外の一軒屋で国内旅行は2年か3年に一度でき、母親は専業主婦でした。子供心に小学校の友人で団地住まいの子供よりかは経済的に恵まれていると感じていました。
中高一貫校に入り、中小企業の社長の子供や医者の子供と友人になり、家に遊びに行って地下室があり、地下にグランドピアノが置いてあったり、都市部のど真ん中に3階建てのでかい家があるのを知って、その時初めて世の中は広いんだな。こんな家庭があったのかとびっくりしたのを覚えています。
たしかに中高一貫校の方が多様性はある気がします。
中学受験で偏差値ばかりを追い求め、仮にそれで成功してしまった子供と親は場合によっては、プライドは高いが自己肯定感の低い人間になる可能性がある。そのような人々は苦境にある人の背景も理解せずに安易な自己責任論を投げつけたり、マウンティングをする。
そうならないためにも中学受験では親は偏差値ばかりで子供を教育するのではなく、子供がどうしたいか。子供を肯定することが大事と最後の章で著者は述べています。
プライドは高いが自己肯定感の低い大人・・・。耳が痛い。尊大な羞恥心と臆病な自尊心だな・・。
中学受験でも大学受験でもたまたま上手くいき、サラリーマンになって30代で鬱病となりエリート街道から転落した私には耳の痛い言葉です。
本書の章の間に挟まれる著者と中学受験をさせる親とのやりとりが紹介されているが、一番最後に発達障害の子供の親が中学受験をさせようとして、著者に悩みを伝えているのが、他人事ではなく、突き刺さった。私の子供も発達障害だが、中学受験とかさせた方がいいのか凄い悩みます。
まとめ
中学受験をするにしても、しないにしても一読する価値のある本だと思いました。子供が中学受験をする年齢に達してない人にこそ前広に読むべき本だと思った。
そして改めて中学受験をさせてくれた親に感謝と、経済的な問題で子供に中学受験をさせることが難しそうな自分が悲しい。
コメント