【書評】高校生からの古典読本

うつ病再発防止に向けたサラリーマン生活
読もうと思ったきっかきっかけ

 学生時代、古文が苦手でした。

歳をとって、社会の理不尽、嫌な事等も

見聞きするようになり、自分の軸を作ろうと模索する日々。

 自分の軸を作るためにも、教養をつくるためにも、苦手としていた古文・古典を読んでみようと思い立ったのがきっかけです。

 古文といっても多くあり、どれから読めばよいのか、どの本が読みやすいのかわからなかったので、本著「高校生からの古典読本」から読み始めることにしました。

本書の概要・あらすじ

本書の著者

 本著は、日本文学の研究者で奈良女子大学の教授の「岡崎真紀子」氏、

 同じく奈良女子大学の教授で日本古典文学の研究者「千本英史」氏、

 源氏物語の研究者である「土方洋一」氏、

 中古・中世文学の研究者である「前田雅之」氏が編著の一冊。

本書の特徴

 古典文学といえば、学生時代に学んだ平安時代の枕草子、源氏物語、和歌等をイメージしがちでした。

 せいぜい鎌倉時代の徒然草や方丈記等。

 一方、本書は、平安時代の源氏物語、万葉集から始まり、

 井原西鶴、松尾芭蕉等の江戸時代の文学、

 そして明治の正岡子規や柳田国男、萩原朔太郎までと幅広い文学が紹介されています。

本書を一読して感じたこと(お勧めな点)

学生時代に目にした有名な古文を味わう事ができる

 所謂、古典・古文で一度は目にした有名な物語の一節について訳文等とともに著者の補足説明が丁寧に記載されています。

 学生時代は大学受験のための勉強という観点が強く、古文のルール等に囚われてすぎていました。

 そのため古文の書かれた背景・作者の思い等まで考える余裕がありませんでした。

 本書は有名な古文の一節を通じ、作者の背景・どのような思いがあり記載したか等をゆっくり理解することができます。

 所謂「古文を味わう」ことに注力できます。

古文以外の歴史の知識とつながる

 学生時代に古文としては学ばなかった著作を知ることができます。

 私の場合は、「太平記」と「さんせい太夫」、「好色五人女」でした。

 本書で紹介されている「太平記」での北条高時一門の自害の記述はとても印象的でした。

 日本史の知識で北条一門が鎌倉で足利尊氏の息子の足利義詮・新田義貞に滅亡させられた知識はありました。

 また北条氏は意外とあっけなく滅んだことも知っていましたが。

 北条一門の自害の様子を生々しく当時の太平記の記述で今回、読むことができ、所謂「知識」が「物語」として実感することができました。

 森鴎外の「山椒大夫」の元となった「さんせう太夫」の原文を読んで、森鴎外は「さんせい太夫」をだいぶ子供向けにマイルドにしたのだなぁ・・・と感じました。

 日本史の文学史として丸暗記した井原西鶴の「好色一代男」に対比する「好色五人女」での有名な八百屋お七。

 原文を読むことで、江戸時代の恋愛というか恋の落ち方も現代と同じなんだなぁと感じました。

 井原西鶴の好色五人女は、原文でほぼ理解することができ、江戸時代の人にとても親近感がわきました。

古文・昔の人が身近に感じられる

 好色五人女もそうだが、江戸時代以降の古文だとほぼ原文で理解でき、人名・場所、当時独特の時代の言い回し・常識以外は訳文がなくても十分理解できます。

 平安時代の和歌等はあまり原文だけでは理解できませんが、江戸時代、もっというと徒然草あたりから原文でも大枠は理解できます。

 「昔の人の書いた古文」というより、同じ日本人が書いた本というイメージでかなり身近に感じることができました。

 著者のあとがきにもありますが、英語圏の古文であるシェークスピアは1600年代。

 同時代の古文を原文で大枠が理解でき、それよりも遡った時代の文書も注釈付きながら読むことのできる日本は、古文という点では改めて恵まれた環境なのだと感じました。

 古文・漢文を軽視する風潮はもったいないと感じました。

最後に

 主に本書は通勤電車の中で読んでいましたが、声に出して読めば、さらに原文のリズムを感じることができたなぁと感じました。

 古文はやはり声に出して読んで韻等を踏みつつ楽しめばよかったと思います。

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