読書はタイムマシンだなと改めて思った話

うつ病再発防止に向けたサラリーマン生活

出世が遅れ、四面楚歌になった時ある逸話を思い出した

出世が遅れ、何事にも被害妄想な状態に陥っている私は、会社で四面楚歌のように感じます。上司からは評価されず、同期には置いていかれ、後輩には軽んじられる。

イケイケの部署にいた時は、「かめさん、かめさん」と慕ってきた後輩も、最近は業務の都合で依頼しても、「どういう趣旨ですか」等と少し距離を置かれる始末。

かめ
かめ

「やっぱり、出世競争から遅れると、人は離れていくんだなぁ、あいつら覚えておけよ」

ふと昔、中国の春秋戦国時代の「孟嘗君」と「馮驩」の逸話を思い出しました。

漫画「キングダム」の時代より少し前のお話

春秋戦国時代の末期、秦の始皇帝の時代を描いた有名な漫画のキングダムよりも少し前の逸話。秦の始皇帝は西暦前259年生まれなので、それより約40年程前の春秋戦国時代の「戦国時代」の逸話です。

秦を含めた戦国の七雄の一つであり、秦と天下を争った現在の山東省(青島ビールが有名)あたりにあった「斉」の国の王族に生まれた「孟嘗君」という人物がいました。

孟嘗君は「斉」の国の宰相を務め食客(一昔の書生みたいな人達)を三千人も抱えていましたが、政争に敗れ、宰相の地位を追われることに。

孟嘗君が失脚すると今まで、「孟嘗君、孟嘗君」と慕ってきた食客たちはみな、孟嘗君の元を離れていったそうです。

ただ一人残った食客の馮驩が色々再起の策を練り、なんとまた孟嘗君は再び宰相の地位へ返り咲くことに。すると去っていた食客たちが孟嘗君の元へ戻ってきました。

孟嘗君は「あいつら、わしが宰相の地位を追われ、失脚した時にはあっさり見捨てて去っていったくせに、宰相の地位に戻るといけしゃしゃあと戻ってきやがって、追い返してやる」と当然ご立腹。

その孟嘗君に対して、馮驩は、「戻ってきた食客を昔のように養ってください」と進言。その後に続けた言葉が印象的で、改めて思い出しました。

三国志や項羽と劉邦と比べてあまり知られていなかった春秋戦国時代が注目されて嬉しいです。

失脚した孟嘗君を裏切った食客を改めて向かい入れるよう進言した馮驩の言葉とは

馮驩は続けて、こういったそうです。

市場には朝、人が集まります。一方、夜には人は去って閑散としています。これは人々が朝を好み、夜の憎んでいるのでしょうか。単に、朝には品物が多く、夜には品物がないからだけです。ただそれだけです。貴方が富貴な身分であったら人が集まり、追放されたら人が去っていく。当たり前のことではないでしょうか」

この言葉を聞いて、孟嘗君は、戻ってきた食客を受け入れたそうです。

一民間企業で出世が遅れた私と「斉」の国の宰相である孟嘗君を同列に並べて語るつもりは当然ありませんが、この馮驩の言葉は、荒んだ私の心にすんなりと入ってきました。

太陽は東から登り、西に沈むのが当たり前のように、偉い人の周りには人が集まり、偉くない人の周りからは人が離れていくのも当たり前。

孟嘗君の時代は前290年頃の斉の国(山東省)、今の私は2021年の日本。時間にして約2,300年、距離にして1,800キロもありますが、馮驩の言葉は私だけでなく、今の日本に普通に通用する言葉ではないでしょうか。

99回負けても最後に1回勝てばいいby張良

そして、また更に、ある一言を思い出しました。今度は春秋戦国時代末期のキングダムの時代から20年~30年後のお話。秦の始皇帝が亡くなった前210年より後の項羽と劉邦が覇を競った時代の話。

楚の国出身の戦の天才の若き覇王項羽に負けてばかりの、農民出身の劉邦。その劉邦に軍師の張良が言った言葉。

99回連敗してもいい、最後の1勝。決定的な勝利を収めれば貴方の勝ちです。

何ともいい言葉だなぁとしみじみ思います。読書は絶対に会えない時間・距離・身分も全然違う人と会話できるタイムマシンだなと思います。

人生は、小学校の駆けっこから始まり、受験、就職、入社したら出世競争と勝負の連続。99回負けても最後の最後で、人生の最後で1勝できればいい人生。99回の勝ち負けは、他者からの評価ですが、最後の勝負の判定は、自分自身。

張良はいい事いいますね。僕も仕事においても、人生においても「捲土重来」頑張るぞ!

最後の1回に負けた項羽の事を考えると悲しくなる

そんなこんなで、負けてばかりの劉邦は、軍師の張良の策等もあり、ライバルの項羽と垓下の戦いで雌雄を決し、最後の一勝を得て天下を統一し、国名を『漢』とします。

劉邦が負けていたら、我々が普段使う漢字は楚字なっていたかもしれません。

一方、敗者の項羽は劉邦軍に包囲されます。その時に劉邦軍の軍師の張良は、「楚」地方出身者を集め、防壁に立て籠る項羽軍に向かって、東西南北から「楚」の地方の歌を歌わせます。

「楚」地方は、項羽の出身地であり、東西南北全てから、「楚」の歌を聞いた項羽は、「私の出身地、私の根拠地も既に劉邦軍に降伏したのだな。だから「楚」の歌が、東西南北(四面)から聞こえるのだな」と心が折れたそうです。これが『四面楚歌』の由来です。

項羽は部下から劉邦の包囲を脱出して、再起を図るように進言されますが、それを断り、劉邦軍に最後の突撃をして亡くなったそうです。

この垓下の戦いから千年後の唐の時代の詩人の「杜牧」がこの事を歌った漢詩の中で、「項羽が諦めずに、土を巻いて重ねて来たならば勝敗はわからなかったのに」から「捲土重来」という四字熟語が生まれたそうです。

やっぱり古文・漢文は必要と思う

漢文・古文は、中学・高校での必須科目としては不要だ。実用性がない。プログラミングだ、英語だといった論調を最近よく耳にします。確かに今の日本で生きていくには、今後プログラミングや英語の方が圧倒的に有利なのは間違いないと思います。

しかし、人生で辛い時、悲しい時に、青春時代に頭の片隅の片隅に置いた漢文や古文の一文が、気持ちを楽にしてくれる、考え方を変えてくれる事もあるのではないのでしょうか。そしてそれが教養というものではないのかなといっちょ前に考えた夜でした。

今からもう一度漢文勉強してみようかな。

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