【書評】なぜ最強の組織は崩壊したのか?『ドイツ参謀本部』バリー・リーチ著から学ぶ、官僚制の栄光と影と「組織論」の教訓

40代夫婦の体験談

はじめに:現代ビジネスの「源流」を歴史に探る

 40代、ふと「組織とは一体何のためにあるのか?」という疑問に突き当たることがあります。特に、出世競争や社内の人間関係、あるいはメンタルヘルスの課題に直面したとき、個人の力ではどうにもならない「組織の論理」の冷徹さを感じることも少なくありません。

今回ご紹介するのは、バリー・リーチ著の『ドイツ参謀本部』(原書房)。

 本書は1979年、第二次世界大戦の経験者がまだ社会の第一線にいた時代に書かれた歴史的名著です。しかし、ここで描かれているのは単なる過去の戦争記録ではありません。今私たちが身を置く「大企業のモデル」となった官僚組織の完成形、その究極の成功例と悲劇的な終焉の記録なのです。

「天才」に勝つための「秀才」による再現性:プロイセン参謀本部の誕生

  かつて、欧州を席巻した戦術の天才ナポレオンに対し、プロイセンが対抗策として編み出したのが「参謀本部」というシステムでした。一人の天才に頼るのではなく、高度な教育を受けた「秀才」を集め、誰が指揮を執っても一定以上の成果を出せる「再現性」のある組織を作り上げたのです。

 この「標準化」と「専門化」こそが、後の近代官僚制の礎となりました。普仏戦争での圧倒的な活躍です。目立たないが重要な役割を果たす参謀たちが、鉄道や電信を駆使して軍隊を合理的に動かす様は、現代で言えばDX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使して市場を制圧する巨大企業の姿に重なります。

第二次世界大戦:肥大化した組織の混迷と独裁者

 しかし、組織は完成された瞬間から腐敗と混迷の種を宿します。本書の後半で詳しく記述されている第二次世界大戦期のドイツ参謀本部は、まさにその「影」の部分を象徴しています。

 特に興味深いのが、ヒトラーという独裁者との歪んだ関係です。戦争指導に介入したがるヒトラーに対し、プロフェッショナルとしての自負を持つ陸軍参謀本部は次第にその権限を侵食されていきます。 本書を読み進めると、組織図が急激にややこしくなってしまい、困惑してしまいます。。

ドイツ国防軍最高司令部 (OKW)

ドイツ陸軍総司令部 (OKH)

ドイツ陸軍参謀本部

 これらの組織が複雑に絡み合い、互いに牽制し合う様は、現代の大企業における「本社部門」と「事業部」、あるいは「持ち株会社」との不毛な権力争いを見ているようです。著者のバリー・リーチは、この人間関係や組織間の力学を歴史の面白さとして描いていますが、組織論として読むと、情報の分断が組織をいかに麻痺させるかという恐ろしい教訓を感じました。

栄光の終焉:40代サラリーマンが学ぶべき「組織の末路」

  世界最強の名を欲しいままにしたドイツ参謀本部の終焉は、あまりにも物悲しいものです。官僚制の頂点に達し、あらゆる事態を想定して計画を練り上げたはずの秀才たちが、最後は独裁者の意志に翻弄され、組織として崩壊していく過程は、現代の「忖度」や「形式主義」に陥った組織への警鐘に他なりません。

 私自身、40代という年齢でこの本を手に取ったとき、単なる歴史的好奇心以上のものを感じました。ASD(アスペルガー症候群)的、あるいは生真面目なまでの合理性を追求したドイツ参謀本部という組織が、なぜ最終的に破局を迎えたのか。それは、数値や計画に依存しすぎ、人間という「変数」をコントロールしきれなかったからではないでしょうか。

おわりに:歴史を知ることは、現代を生き抜く武器になる

 本書『ドイツ参謀本部』は、歴史好きな方はもちろん、組織の論理に疲れを感じているビジネスパーソン向けの1冊に感じました。 「管理職になりたくない」という選択や、職場で“ゾンビ”にならないための心得を考える上で、この最強組織の興亡は多くのヒントを与えてくれます。

 官僚制・組織論の頂点と深淵を学ぶことは、私たちが今の社会を少しだけ俯瞰して見るための助けになると思います。


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