【書評】保身~積水ハウス、クーデターの深層~/藤岡雅

40代夫婦の体験談

 週刊現代の記者である著者の「藤岡雅」氏の著書「保身~積水ハウス、クーデターの深層」を読んだ。

 積水ハウスが地面師詐欺にあい60億円程度の損失を出していた事はニュース等で知っていたが、詳しくは知らなかった。

 本書は、積水ハウスの地面師詐欺の深層から始まり、その地面師詐欺を利用した社内クーデター、社内クーデター後の株式争奪戦の顛末について丁寧な取材を元に記載されている。

 国内事業を統括し、社長案件として暗にプレッシャーをかけていた社長(頭の上がらない会長にのちにクーデターを起こす)については、本書はかなり批判的に書かれている。

 一方、海外事業に注力し、20年間ほどトップにいた会長(クーデターを起こされ、辞任)については比較的好意的な記載となっている。

 私にはどちらが正しかったのか、あるいは両方とも悪かったのか等の深層はわからないが、社長案件として稟議が事後回付になる様、担当次長が前のめりになる様は古い日本の大企業の一員として臨場感とともに納得できた。

 ニュースでの積水ハウスでの地面師詐欺を見たとき、積水ハウスほどの大企業の社内統制をかいくぐって成功した詐欺はどれほど巧妙だったのだろうと疑問に思ったが、本来の地主からの内容証明による抗議等を、社長案件として早急に実施するプレッシャーから怪文書として放置する様等は寒気がするとともに、でも弊社でも起こりえるんじゃないかなぁ・・・と思ったりもした。

 社長によるクーデターの票読み、会長の腹心であったはずの財務担当の副社長の心変わり等は物語としてはとても面白かったが、一平社員の私にはさすがに想像の上の話ではあった。

 半沢直樹等で映像化してくれたら絶対に見たいドラマチックな内容。

 クーデター成功後の辞任させられた会長の反撃(株主総会での社長以下の解任の株主提案)の後半部分から少し正義とは、社会とは、会社とはといった教科書・教条じみたニュアンスが多くなってくる。後半部分が著者の言いたい事だったのだと思うが、臨場感・ワクワク感・ドキドキ感は前半に比べると少しだけトーンダウンした印象。

 「コーポレート・ガバナンスとはなにか」について後半は考えさせられる。ちなみに私もコーポレートガバナンスはどちらかというと内部統制のイメージが強かった。

 弊社もコーポレートガバナンスを強化と言いつつ内部統制ばかり強化されている気がする。積水ハウスの社員たちはこの事件についてどう思っているのだろう・・・。

 結末はここでは書かないが、やっぱり日本社会は村社会だよな・・・といった残念な結末。

いずれにせよ、積水ハウスの地面師詐欺事件の深層やサラリーマン本(クーデター)としても読みごたえのある1冊でした。


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