NHKの朝ドラの「虎に翼」の主人公の夫となる星航一が所属していた「総力戦研究所」。
総力戦研究所といえば、元東京都知事の猪瀬直樹氏の書いた「昭和16年夏の敗戦」が有名だ。
名前は知っていたが、今まで読んだことがなかったので今回、手に取ってみました。
概要
勅令をもって内閣直属機関として設立された「総力戦研究所」。高級官僚・軍人・民間から30代の将来を嘱望されるエリート達が集められた。
本書は、第一期生達が元の所属組織(満州国や朝鮮総督府)から東京へ集まるところから始まる。前半は第一期生の動きを中心に総力戦研究所の設立経緯・背景等の説明、どのようなことがなされていたのかが卒業生達のインタビューや調査をもとに鮮やかに再現される。
前半のクライマックスはやはり第一期生達が組織した「模擬内閣」が実際の東条首相の前で日本必敗の報告をするところだろう。
後半は、総力戦研究所というよりも実際の当時の政治の動き等が中心となり、総力戦研究所の話は少し薄くなる。そして最後に総力戦研究所の第一期生達のその後を追って終わる。
感想
総力戦研究所のことは虎に翼を見る前からも知っていた。総力戦研究所については、日本の超エリート・テクノクラートが集まり、対米戦争を研究した今でいう戦略コンサルのようなイメージを持っていた。
実際にそのとおりなのだが、総力戦研究所は目的は「総力戦の研究」と大々的ながら、実際は作りながら走っていった組織であり、体育の授業があったり、外交・軍事・政治経済の講義があったり、実地研究という名の遠足(笑)があったりとコンサルというよりも学校に近い形から始まったのは本書を読むまでは知らなかった。
また模擬内閣を組織したのは知っていたが、実際の内閣に対峙する大本営・軍部役を教官側がやり、対米について外交で対応しようとする模擬内閣を開戦まで追い込んだのも知らなかった。
私はアラフォーだが、私よりも年下の30歳~35歳程度のエリートたちが戦前に国家の行く末を議論したことは改めて驚く。そしてそのようなエリート達も「日本必敗」の結論を知りながらも時代の流れに身をゆだねるしかなかったことも何とも言えない気持ちになった。
本書は昭和58年発行であり、舞台となった昭和16年から42年経過している。そして今この記事を書いている令和6年はこの本の発行された昭和58年から41年経過している。
この時の流れに改めて驚くとともに昭和は遠くになりにけりと改めて感じた。
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