蒼穹の昴(浅田次郎)を読む中で伊藤博文に従う会津藩出身の冷静沈着な軍人の柴五郎を知った。蒼穹の昴の中の架空の人物ではなく、実在の人物であることを知り、調べたところ、1971年初版の本書に行きつきました。
著編者の石光真人氏は、晩年の柴五郎氏と実際に会い、会話もしており、柴五郎氏の日記を編集したのが本著。
幕末から明治時代にかけての旧会津藩士の悲哀がすごくリアルにわかります。
柴五郎とは
柴五郎氏は1859年の幕末に生まれ、なんと太平洋戦争終了後の1945年12月13日に逝去。義和団事件の際の北京籠城戦の指揮を執り、米国・英国から賞賛される。最終的には朝敵会津藩出身ながら陸軍大将まで昇進。
本著は柴五郎氏の幼年期(会津戦争)から陸軍幼年学校に入学するまでの1860年台中盤~1870年後半までが主に綴られている。
本著の感想
最初は、蒼穹の昴での義和団事件の北京籠城戦等が中心かと思っていたが、本著は上記のとおり、柴五郎氏の会津戦争~斗南(青森)の苦渋の生活~上京後の陸軍幼年学校入学までがメインとなっている。
なお、柴五郎氏の北京籠城時代(蒼穹の昴の時代)については、柴五郎氏自ら書いた「北京籠城」が良いみたいだ。今度借りてみよう。
柴五郎氏は太平洋戦争が終わった1945年の12月までご存命で、著者の石光氏も太平洋戦争中に柴五郎氏と会っている。柴五郎氏は陸軍大将まで登ったものの、1930年には退役。柴五郎氏は敗戦を予測しており、そして実際に敗戦を目にしている。
会津戦争の従軍者(実際は柴五郎氏は会津戦争の戦場には従軍していない)が太平洋戦争の敗戦を目にするのはなんともいえない時代の流れを感じる。
大活躍した義和団事件、日露戦争、そのあとの太平洋戦争まで柴五郎氏は多くの戦争を目にしてきているが、その中でもやはり幼少期の頃のほぼ家族全員がなくなった会津戦争が一番心に残っていたんだなあと本書を読んで思った。
本書を通じ、そして江戸末期とはいえ江戸時代の武士としての教育を受けてきた柴五郎氏の武士道・誇りというものが垣間見れる。そのようなラストサムライの柴五郎氏からみて、昭和陸軍のいわゆる陸軍幼年学校卒のエリート軍人はどのように見えていたのだろうか。今となってはわからないがとても興味がある。
賊軍出身でもある程度知名度のある「立見尚文」とは異なり、そこまで世間では知られていない柴五郎氏。読み応えのある1冊でした。今度は「北京籠城」を読んでみよう。
コメント