【書評】テンペスト(春雷)/池上永一著

うつ病再発防止に向けたサラリーマン生活

2012年にNHKにてドラマ化された池上永一著の小説、テンペスト。

 幕末の清・日本(薩摩)の間に揺れ動く琉球を舞台にした小説。

 NHKのドラマでは仲間由紀恵が主演。

 前から読みたいと思っていたが、なかなか読む機会がなく、後ろ倒しになっていた作品。

 文庫本では4巻に渡る。1巻目の「春雷」を読了。

 テンペストを全て読んだ中での感想ではないので、後々、修正前提での感想。

前半

 主人公の真鶴(のちの孫寧温)の科挙の合格までの話。

 琉球は清国の影響を受けて科挙を実施。当然、女性に受験資格はない。

 意欲・才能・熱意に溢れる真鶴は、学問に飢え、隠れて勉学に励む。

 科挙合格の期待を背負った兄の失踪等を経て、真鶴は、男性で去勢手術を行った宦官ということで科挙を受け、無事に合格。

【感想】

 女性である上に勉学ができない悔しさ・悲しさを跳ね除ける真鶴の明るさ・聡明さ。

 真鶴を認めてくれる師、ライバル、兄等の温かさ。

 春雷の前半は、悲しい・悔しい場面はあるものの、真鶴の科挙の合格までの成功物語。

 読んでいて気持ちのほっこり・ワクワク。

 通勤電車の中で一気に読み進めてしまいました。

後半

 科挙に合格し、若干10代ながら評定所筆者主取というざっくりいうと内閣府の事務局長的な立場になった真鶴こと宦官の孫寧温。

 才能が溢れ、大抜擢された孫寧温への嫉妬等の官僚たちの嫌がらせを綺麗にかわす孫寧温。

 清国からの冊封使、イギリス船の難破・漂流等の難問を官僚たちの嫌がらせをかわしつつ、解決していく孫寧温。

 琉球王国の大奥にあたる御内原や王の姉で宗教的な権威のある聞得大君の暗躍が進められていく。

 財政改革で王妃も王の姉である聞得大君ともに敵に回した孫寧温。

 ただ春雷では、孫寧温が直接追い込まれることはまだなく、王妃に対する王の姉である聞得大君の嫌がらせが続く・・・。

【感想】

 孫寧温の政策面での活躍が面白い。大抜擢された孫寧温への嫉妬・既存の役人からの嫌がらせはいらっとくるが、所謂、半沢直樹的なやりとりはなく、嫌がらせもそこまでではない気がする。

 大国の狭間にゆれる琉球は外交問題が第一。様々な外交問題を解決していく孫寧温。

 政治面での孫寧温の活躍はわかりやすいが、後半のもう一つのテーマは女の戦い。

 大奥にあたる御内原(王の妻。王妃)の中のドロドロ劇はわかるが、琉球王国はもともとは祭政一致であり、その名残もあり、宗教的権威である王の姉の聞得大君も出てきてもうぐちゃぐちゃ。

 宦官ということになっている女性の孫寧温が女性であることがそろそろばれそうな雰囲気が近づいているが、まだハラハラドキドキの展開には至らず。

 王妃への王の姉である聞得大君の嫌がらせは曳きますね・・・。

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