究極のピラミッド組織であった弊社。外資系コンサルの口車にのり、マトリックス組織を導入。
マトリックス組織の導入意義を忘れ、人員削減にまい進した結果、末端の社員が疲弊している事例をまとめてみました。
そのうえで、マトリクス組織の弊害から身を守る方法をまとめてみました。
マトリックス組織とは
マトリックス組織は1960年代にアメリカで提唱された組織。
一人の社員が複数の仕事をこなす組織。複数の軸を作り、職能別、プロジェクト別、地域別と分けたうえで、それぞれの指揮命令系統から指示を受ける組織。
ピラミッド組織からマトリックス組織へ
弊社は、伝統的な日本の大企業であり、官僚体質・縦割りが課題となっていました。
そのような縦割りの弊害を打破すべく、外資系コンサル会社(※)の口車に乗りのアドバイスを受け、マトリックス組織の導入を一部開始しました。
※超有名な外資系戦略コンサル。弊社の経営陣はプライドが高いので、超有名な企業にしかコンサルを依頼しないのである!
マトリクス組織導入の事例(弊社)
マトリクス組織導入の前提
マトリクス組織の導入の前提としては以下の条件が挙げられます。
- 縦軸(プロジェクト等)のトップの連携
- 業務に習熟した社員(プロフェッショナル)
- 社員を適切に評価・(労務)管理する仕組み
弊社はマトリクス組織を導入するにあたり、所謂本社の企画部署にお試し導入しました。
上手くスムーズに導入でき、経営人は自信を深めたようです。
お試し導入(前提)での罠
お試し導入部署でスムーズにいけた背景としては以下の要因があるのですが、社員の能力を心から信頼する経営陣はその罠に気が付かなった模様。
①プロジェクト間のトップの連携
マトリクス組織導入プロジェクトに携わっていた企画・戦略部署での導入のため、トップ間の連携、目的意識の共有はしっかりできていた。
全社的に導入するにあたり、プロジェクトトップ間の連携(情報・目的共有強化)はあまり検討されなかった模様。
②社員のプロフェッショナル
もともとエースが配属される企画・戦略部署。
担当者も30代の各支社等で名なり、功を挙げた人々。そしてなによりマトリクス組織導入プロジェクトの最初からいた人々のため、「引継ぎ・キャッチアップ」は不要であった。
③社員の適切に評価・(労務)管理する仕組み
企画・戦略部門の社員は役員・主要部署の部長等とも顔見知り。
また労務については、企画型裁量労働制のため、それほど重視されてなかった模様(残業等も高い目標意識等を持つエースはあまり問題視しなかったようです)
マトリクス組織導入範囲を広げた結果
企画・戦略部署でのマトリクス組織の導入がスムーズにいった事を踏まえ、支社以外にマトリクス組織の導入が始まりました。
あくまで1係長目線ですが、結果は以下の通りです。
- 目に見えるパワハラは減った
- 人員削減が進んだ
- 管理職は部下の労務管理を行わなくなった(残業時間は増加)
- 縦割りはさらに進んだ。
目に見えるパワハラは減少
弊社は目に見えるパワハラが多く、部下が上司の机の隣で大声で長時間叱責されたり、飲み会での立ち振る舞い等を叱責されることも多々ありました。
マトリクス組織の導入により、上司が部下の全てを掌握する(逆に言えば、部下が上司に生殺与奪の権を握られている)ことがなくなりました。
所謂、「目に見える」パワハラは減ったように思えます。
人員削減が進んだ
人員削減は進みました。縦割りの場合、各々に庶務・総務等の人員を張る必要があったのですが、そのような人員は削減され、個々人で実施することになったため。
また社員はプロフェッショナルということで、総合的に人員は削減されたようです。
たた削減された人員がどの部署に行ったのかは謎です。「神隠し」・・・・。

削減された人員はリストラはされていないようですが、どこの部署に移動したのかは謎。
どの部署も人が削減された、削減されたと大騒ぎしているが、削減された人員はどこにプールされているのかは謎・・。
管理職が部下の労務管理を行わなくった
上司・部下の関係性が薄れたこと、上司は部下の仕事の全容を把握できなくなったことより、管理職は部下の労務管理を行わなくなっている事例が散見されます。
また複数の上司(プロジェクトが異なる)が一人の部下各々業務を与えた結果、社員は一人で大量の業務を抱えることになり、相談相手もおらず長時間労働が散見されます。

リモートワークの進展によりさらに相談できない状況が激しくなっているようです。
縦割りがさらに進んだ
下の社員は複数のプロジェクトを掛け持ちする一方、プロジェクトの上位者は一つのプロジェクトに特化しているため、縦割りはさらに進んだように感じます。
複数のプロジェクトを抱える下の社員が連携し、各々のプロジェクトトップに横の情報を伝える必要があるようです・・・。

現場からは以上です。
マトリクス組織から一社員が身を守る方法
マトリクス組織の導入状況を踏まえると社員への影響は以下の通りです。
- 長時間労働の発生(自分での労務管理)
- 教えあわない職場風土への対応
長時間労働の発生への対応
マトリクス組織では、部下の業務量管理・労務時間管理は誰もしてくれません。
一方、各プロジェクトの上司は連携することなく、部下に各々の仕事を振ってきます。
全てを真面目に引き受けていては時間もなく、精神的にも摩耗してしまいます。
自らの健康・メンタルを守るのは自分自身。
限界に近づく前に、各プロジェクトの上司全員に自分の抱えている業務を通知のうえ、早めにSOSを目に残る形で残しておくことが必要。
それでもメンタル不調や体調不良に陥った時には人事部なり、さらなる上の責任者にSOSを伝えよう。
マトリクス組織を導入する組織は比較的大規模な企業が多いため、人事部なり外部の弁護士相談等に正式に相談さればなんとかなる気がします。

対面を気にする弊社のみ通用する方法かもしれませんが・・・。
教えあわない風土への対応
マトリクス組織はプロフェッショナル社員が前提です。
ただ新入社員や部署異動仕立ての社員は業務知識もなく、右往左往するのみ。
そして誰も積極的にレクチャー等はしてくれない(新入社員は除くかも)なか、焦りばかりが募っていきます。
この場合は、もう色々な人に聞きまくり、最終的には長時間問題と同じくSOSを出しまくるしか対応方法はないと思います。
対面を気にする企業であれば、部下が色々な人にSOSを出しているのを知れば、慌てて何らかの対応はしてくれるはず・・と信じています。。

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